M2, ASP2060, CPM10Vとは何のことか?
製品の販売状況

ウッドターニングに使う刃物は、クラフトサプライのカタログを見ると沢山出ています。使っているスチールによって、切れ味の持続性が違うと説明されている。M2 HSSは一番値段がやすい。Hamletの2030はM2に比べて3倍長持ちする。2060は4.5倍長持ちするというが値段はもちろん高くなっている。値段に見合う性能が本当にあるのだろうか?色々調べてみた。

粉末冶金で作られたツールを表に纏めてみました。表の値段はボウルガウジのものです。アメリカの販売店から購入することが出来ます。M2比の耐摩耗性は販売店の宣伝文句です。実際の刃の持ちとは異なりますので、ご注意ください。ここで注目されるのはグレーザーと同じV10を使っているThompsonの値段の安さです。このトンプソンだけハンドルなしの値段になっていますが、それでも安いです。しかも海外から通販で買う場合ハンドルが付いていない方が送料が安くなります。ハンドルはターニングで簡単に作れるので、刃物だけ買った方が安上がりです。Thonpsonの値段が安いので、注文するつもりです。詳細は別報します。

こちらは炭素とバナジウムを多く含んでいると宣伝しています。CPM(Crucible Particle Metallurgy)合金はHIPというプロセスで作っているそうです。

スチールメーカー発表の耐摩耗性

M2に比べて耐摩耗性は2030は1.5倍ぐらい、2060で2倍+程度です。これは小生が実際に2060を使った結果とほぼ一致します。刃物を売る販売店がそれぞれ3倍、4.5倍と言っているが、スチールメーカー発表の耐摩耗性を、誇大に表現しているものと思います。実際2060が4.5倍も長持ちするというのは、体感できません。研磨容易性はM2より2060は悪くなっています。硬いということでしょう。

Taylor社

耐摩耗性を高めるためコバルトが入っていると説明しています。ASPプロセス(AESA Stora Process)で作られています。

クルーシブ社

こちらは耐摩耗性はM2に比べて15Vが6倍以上、10Vは2種類ありますが、4倍前後となっています。ツールの販売店は10Vが4.5倍、15Vは6倍以上と説明しているので、スチールメーカーの発表とほぼ一致しています。このメーカー発表のデーターが正しいことを望むばかりですが、グレーザーのツールは使ったことがないので、実際のところはわかりません。S師匠の話では、Henry TalorのKryoと同じぐらいの刃の持ちで、柔らかく砥ぎやすいという。HRC(硬度)はM2が64で10Vは60のものがある。10Vの60の物をS師匠が使っていたなら、この使用感はデータと一致していることになります。

粉末冶金
含有率(%) 炭素 クロム バナジウム モリブデン タングステン コバルト
M2 0.85 4.20 1.90 5.00 6.00 -
CPM M4 1.42 4.00 4.00 5.25 5.50 -
CPM 10V 2.45 5.25 9.75 1.30 - -
CPM 15V 3.40 5.25 14.50 1.30 - -
ASP2030 1.28 4.20 3.10 5.00 6.40 8.50
ASP2060 2.30 4.00 6.50 7.00 6.50 10.50
組成
ASP2030、2060

金属部品の製法は鋳造、鍛造、ロストワックス、ダイカストなどいろいろあるが、最近注目されているのが粉末冶金です。文字通り金属の粉末を使って製品を作ります。鋳造では融点・比重の組合せで均一な組織が作りにくい合金の製造や、鋳造よりも後加工の少ない素材の製造などに利点があるそうです。ASP2030、2060などはイギリスのTaylor Special Steels Ltdが製造しており、グレーザーのV10、V15などはアメリカのクルーシブ社で作られています。どちらも同じ粉末冶金の製法で作られますが、プロセスと組成が異なります。

サイズ ハムレット ヘンリーテイラー グレーザー クラウン トンプソン
2030 2060 Kryo V10 V15 Pro-PM V10
3/8 $72.99 $84.99 $66.99 $99.95 - $62.99 $40
1/2 $89.99 $105.99 $93.99 $119.95 $174.99 $77.99 $50
5/8 $132.99 $146.99 $139.99 $149.95 $199.99 - $70
M2比耐摩耗性 3倍 4.5倍 6倍 4.5倍 6倍 4.5倍 Better
CPM 10V、15V